2019-01-01から1年間の記事一覧

赤松利市『純子』を読んで。

この本を紹介する前に諸注意……と言うか、あなたにこの本を読む覚悟があるのかどうか──という確認を先ずもってしておきたい。 と言うのは、この『純子』という作品、糞(クソ)の小説なんだよ。そんじょそこらに転がっている胸糞悪い小説とは明らかに一線を画し…

赤松利市『ボダ子』を読んで。

本が泣いていた。 叫び声をあげながら、「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」と、懺悔するように泣いていた。そんなふうに思った。これは初めての感覚だった。 これが、『ただの物語』だったのならば、私はどれほど救われた気持ちになるだ…

村田沙耶香『コンビニ人間』を読んで。

強烈な個性は社会から排除される。 それは、社会を正常化するための修復作業であり、人間で喩えるならば免疫機能・代謝機能のようなものだ。不純物は廃棄され、古くなったものは入れ替えられる。代役はいくらでもいる。いくらだって量産できる。 そして、そ…

赤松利市『藻屑蟹(文庫本版)』を読んで。

本ブログでも一度紹介したことがある、第一回大藪春彦新人賞を受賞した短編小説『藻屑蟹』には、続きがあった。続き。続編。 一年前の昨日、電子書籍の無料コーナーで偶然見つけたこの本をすぐに読み、あっという間に度肝を抜かれたのをよく憶えている。ショ…

吉村萬壱『臣女』を読んで。

不条理。不憫。不潔。 人の愛という物が、一体どれほど醜く愚かしいものであるか、そしてまた、どれほどに儚く美しいものであるか。そんなことを残酷に、切り刻むように教えてくれる小説。もしも誰かに「純愛とは何ぞや」と問われれば、私は第一にこの小説、…

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』を読んで。

ごきげんよう。 どうやら今日は全国的にバレンタインというイベントの日らしいが、これは実にくだらん。この件に限った話ではないが、日本人は外国の風習に影響を受けすぎなのだ。日本には日本の風習。日本人には日本人の価値観というものがあるだろうに。な…

三津田信三『のぞきめ』を読んで。

困ったことになった。 読書感想文という体裁上、ここに書く記事は飽くまでも"感想文"でなければならないわけだが、しかし、それに反してと言うか……このブログを書く上での自分ルールとして"出来る限りネタバレはしない"という制約を自身に課している所為で『…

吉村萬壱『ボラード病』を読んで。

アレッ……今回はずいぶん早めの更新になっているかと思いきや、もう前回の読書感想から一ヶ月も経ってしまっているんだね……。イヤ、例のごとく読書はしているんだよ。ただ、感想が書きづらいものばかりでね……これは前回も少し話したけれども、ミステリーが多…

赤松利市『らんちう』を読んで。

ン……ンン……どういったことだろう……年が明けているような気が……ンン……ン……、かなり少なくはあるけれども週に一冊くらいは小説を読んでいるはずなのだが……読書感想文を書いていない……ハハ……アケオメ……。言い訳をさせてほしい。 いやね、最近はミステリばかり読…