内藤了『鬼の蔵 よろず建物因縁帖』を読んで。

イヤア、こんな寒い時期にホラー小説なんて読むものではないね……全身の毛穴という毛穴が粟立っちゃって、寒くて寒くて仕方がなかったよ。今もこの記事を書きながら冷気と霊気にブルブル震えているわけだけれど……しかし、ズットそうしている訳にもいかないのだ。早くコレを書き終え、少しでも多く睡眠時間を取らないとまた寝坊癖が再発して遅刻を繰り返してしまう……ので、とりあえずは、何かが見えてしまわないよう出来る限り窓やら襖やら、または鏡や天井に目を向けない事を意識しつつ必死で携帯画面と睨めっこをしながら、簡単に感想を書いて行くことにしよう。

──さて、今回読んだ『鬼の蔵』は、いわゆる民俗学ホラーだ。うん、実は大好物でね。あらすじを見た瞬間、脳内レーダーにビビビッと電波が来て即購入に至ったわけなんだけれど、これは大正解だった。
古くから、『お盆の最中に隠れ鬼をしてはいけない』という言い伝えが残っている閉ざされた小さな山村内での怪異譚・因縁を、主人公であるところの広告代理店勤務キャリアウーマン春菜(はな)ちゃんと、曳き屋(曳き家)師の仙龍という男が解き放ち、国の重要文化財、兼、道の駅にしていくという流れなんだけども……遊び半分で禁忌に触れて『オクラサマ』と呼ばれる“ナニカ”の祟りに遭ってしまった兄妹の妹方が語るそのプロローグが、まあ怖いの何のって……冒頭からズブズブと惹き込まれてしまって、気が付いたら読み終わっちゃっていたよ。ハハハ。合計二三時間くらいだったんじゃあないかな。
ページ数も多くなくて、文体も非常に読みやすい。リズムが崩れない上に登場人物がみんな個性的で可愛らしく、しっかりとキャラが立っている。会話の掛け合いなんて小気味のいいもので、コメディーホラーと言ってしまっても良いくらい。
だからだと思うんだけれど、なんだか漫画を読んでいるような気分だった……と言うとこれは聞く人によっては「失礼だ!」なんて言ってくるかな。ハハン。そのくらい読みやすくて面白かったという話だよ。褒めているんだよ、本当にね。
まあ、欲を言うなら、もう少しホラー要素を強く盛りんでくれても良かったかなとは思ったけれども……しかし基本的にホラーとは悲劇である。
怪異が産まれるのには必ず理由があり、その理由は大抵の場合が悲劇的なもので、清算しきれなかった哀しい過去だったり、募り募った怨みの念だったりと、そんなやり切れない負のエネルギーが形となってオバケや妖怪、祟り神などを産む。そして、この『鬼の蔵』も、例によってそんな悲劇を描いた作品で、大昔のシキタリや風習が大きな原因・因縁となっているんだけれど……この作品はその悲劇の要素が強すぎたと言うのかな。怖いと言うよりも……といったような。いや、怖いんだけれどもね。特に最初は。
おどろおどろしかった空間も、事実を知れば見えかたが変わる。という事だろうさ。

少し話が逸れるけれど、隠れ鬼にしても、かごめかごめにしても、昔からある子供の遊びって、どこか儀式めいているというか……降霊術だと思えば思えなくない形式のものが多いのは何故なんだろうね。やっぱり民族的な風習だったりが関係しているのかな、なんて勘繰ってみたりね。ハハ。

……しかし、なんだろう。こういう民俗学的なものを見ると、現代ではおよそ考えられないような事が、昔は当たり前のように行われていた事実に驚愕せざるを得ないよね。
それを知った上で、今をどう生きるか。未来にどう繋げていくか。
そんな事を考えてみるのも、たまには悪くないかなって思ったよ。
嘘だけど。

──どうやら、この小説は『よろず建物因縁帖』というシリーズの第一作目らしく、残りのシリーズも続けて読んでみようと思う。
間にロマンス的展開もありそうだから、甘味もあってバランスいいよね。ハハハ。
面白かったー。