羽 田 圭 介 『 黒 冷 水 』を読んだ。

せわしなく日々を過ごしていたらオヤオヤ、読んでから随分と時間が経ってしまったようだ。ハハハ……ままならないものだよ、本当に。やれやれだ。
一ヶ月くらい経ってしまっているんじゃあないかな……その間、読書も出来ていなかったと言うんだから……まったくやれやれだよ。
……サテ。今回読んだのは2015年度に『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞した羽田圭介氏のデビュー作『黒冷水』だ。
私自身、テレビをあまり観ないもので、そこら辺は全然詳しくはないんだけれども、どうやら同時受賞者である又吉直樹氏よりもよっぽど強靭な癖の持ち主らしく、バラエティ番組なんかでも大変人気のある作家さんらしいね……多彩な人ってのは居るんだね。ハハ……その多彩な作家さんが17歳の時に書いた小説『黒冷水』だ。
17歳だゼ……私が17歳の時なんて、何をしていただろう……まだヨチヨチ歩きだかハイハイだかをしていたような記憶しかないね。
……そんな事は置いておいて、内容のほうはと言えば、なんと言うかな、マア有り体に言えば兄弟喧嘩と言うか、『兄弟バトル』だね。イヤ、バトルものとは言いづらいと言うか……それはまた違うんだけれど、これを喧嘩と言うには少し違和感があるのだから仕方ない。
兄の部屋を漁ることに変態的な悦びを感じる弟・修作と、その弟の部屋漁りにウンザリして何とかそれを阻止しようとする兄の正気(まさき)。
プライバシーは守られるべきものであり、誰であろうと、家族であろうと、それを侵害するのは決して許される事ではない。しかし、見方によってはどこの家庭でも『よくあること』であり、そんな目くじらを立てて怒るほどのことでもない……というのが、このテーマの面白さだろう。
私も三つ年の離れた姉がいるのだけれど、中学生の頃に似たような事をしたしされた経験がなくはない……姉の持っているエロ本(BL同人誌)をコッソリ読み漁っていた時期があったし、姉がそれを察知して隠し場所を変えられた事もあった。
だからという訳ではないけれど、この小説をよりリアルに感じたというのは多分にあるね。
当時の姉の中にも黒くて冷たい水が流れていたのかと思うと反省することしきりだよ……。報復がなかったのは救いだよね、うんうん。
ああ、そう。これは一人称視点の小説なんだけれども、章ごとに兄弟の視点が入れ替わるという中々トリッキーな構成になっていてね……そこからも羽田圭介氏の才能を感じざるを得なかったね。
一人の一人称視点だけでも難しいというのに、その視点をアッチ行ったりコッチ行ったりと……やはり賞作家は若い内から実力が違うよね。
とは言え、当時まだ17歳だ。
正直なことを言えば、ラストの《黒冷水》は、『面白い事をしようとした感』があったように思う。狙い済ましているというか、若いなと思ってしまったのは本当の話だ。
そういうオチじゃあなくても良かったのでは? と、偉そうなことを言ってみたりね、ハハ。
どの小説に対しても「面白い」の一点張りじゃあ書き甲斐がないじゃあない。
と言いながら、とても面白かったんだけどね。読む手が止まらなくて困ったくらいだよ。
時間があるときにはスクラップ・アンド・ビルドのほうも読んでみようかな。ハハン。